研究概要 |
これまで私共が確立した,B220陽性(+)preBリンパ球と株化間質細胞ST2との共存培養による破骨細胞形成系では,B220(+)preBリンパ球の分離はB220抗体結合磁気ビーズを用いて行っていた.本研究では種々の抗体を用いて2重染色した細胞を,1細胞づつ96ウエルプレート中にまきこみ,破骨細胞を分化させる必要がある.そのため,B220(+)preBリンパ球をフローサイトメーターによって分離し,あらかじめST2細胞を培養しておいた96ウエルプレートの各ウエルに,1細胞づつまきこみ,破骨細胞を形成させる実験を行った.しかし破骨細胞の形成はほとんど観察されなかった.この原因を種々検討したところ,フローサイトメーターを用いた細胞分離は,磁気ビーズを用いる分離方法に比べ,分離される細胞に対する障害が大きいようであった.また,本研究の場合は96ウエルプレート中のST2細胞も長時間フローサイトメーターにセットされているため,同様に細胞に対する障害・破骨細胞形成支持能力の低下が観察された.これらの問題点を改善するための条件検討がまず必要となった.種々の検討の結果,分離作業中にフローサイトメーターにセットされている細胞をできるかぎり冷却することで,B220(+)陽性細胞の活性はある程度改善されること,また,細胞懸濁溶液中に1%程度のBSAを入れるとよいことが明らかとなった.一方,ST2細胞側の条件検討の結果,ST2細胞の1ウエル当たりの培地量を,通常の100μlから250μlに増加させ,B220(+)細胞まきこみ時の衝撃から細胞を保護することで,ある程度,破骨細胞形成支持能が維持されることが明らかとなった.これらの検討の結果,フローサイトメーターで分離した細胞から破骨細胞がある程度形成させることが可能となった.
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