研究概要 |
近年、Notchに代表されるEGFリピート構造を持った受容体分子や、細胞外基質タンパク質が、細胞分化をコントロールすることにより形態形成に重要な役割を果たしている事が明らかになってきた。われわれは、骨芽細胞様細胞株から、EGFリピ-ト構造を持つ新規の細胞外基質タンパク質「POEM (Preosteoblast EGF repeat protein with MAN domain」をクローニングした。マウス胎児を用いたin situハイブリダイゼーションによって、POEMは骨芽細胞の前駆細胞だけではなく、腎臓、副甲状腺などカルシウムの代謝に深く関わる組織にも高い発現が見られた。POEMが持つArg-Gly-Asp細胞接着配列には、α8β1インテグリンが結合する事も分かった。さらに、ヒトゲノムデータベースとの照合により、POEMが先天性の糖尿病/尿崩症を特徴とするWolfram Syndromeと関係している事が示唆されている。 また、活性型Notchをヒト間葉系幹細胞で強発現させる事で、インビトロで非常に効率良く骨芽細胞様形質を持つ細胞に分化させる事にも成功した。活性型BMP受容体(ALK6QD,宮園耕平先生より供与)と組み合わせて、コラーゲンゲル内で3次元培養を行う事で、石灰化を促進し、骨様組織を得る事も出来た。 今後は、POEMの第2受容体の同定や、SCIDマウスに移植したヒト骨片にNotchとALK6QDによって強く骨分化を誘導した細胞を注入する実験を行い、これらの研究成果をさらに発展させたいと考えている。
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