平成12年度はウサギ大脳皮質の口腔・顔面領域の覚醒下での詳細なマッピングを行うことに重点をおき研究を進めてきた。 ウサギでは大脳皮質の機能分化が進んでおらず、霊長類でみられるような運動野、感覚野あるいは大脳皮質咀嚼野の明確な区別は少なくとも組織学的には不可能であるといわれている。現状では大脳皮質のほぼ同一の領域が大脳皮質咀嚼野(CMA)または顔面運動野(face MI)、時に第一次顔面感覚野(face SI)として扱われている。そこで本研究では、単一神経細胞活動記録と皮質内微小刺激(ICMS)を組み合わせてウサギ大脳皮質口腔顔面領域の機能的マッピングを試みた。すなわち、記録された神経細胞の受容野の有無と応答特性、short-ICMSおよびlong-ICMSの効果の有無を調べ、30μA以下のshort-ICMSにより口腔顔面領域に筋収縮が誘発されればface MI、50μA以下のlong-ICMSによってリズミカルな開閉口運動が誘発されればCMA、ICMS応答は誘発されず明確な受容野のみ観察されればface SIとする方法である。 その結果、ウサギではface MIとCMAには明確な境界線が得られないことが明らかになった。すなわちshort-ICMSによって口腔顔面領域に筋収縮が得られる脳部位とlong-ICMSによってリズミカルな開閉口運動が誘発される部位は大きく重なり合っていた。また、従来CMAとされていた部位は吻内側部と尾外側部にに分かれることが覚醒動物では明らかになった。また、face MI内部でも機能的な局在があることが明らかになった。face SIは尾外側咀嚼野および運動野尾側部のやや後方に位置していることが明らかになった。今後はこれまで同定された部を冷却ブロックすることで咀嚼・嚥下の遂行に重要な反射がいかなる影響を受けるかについての実験を行う。
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