テトラヒドロビオプテリン(BH4)は、交感神経系の神経伝達物質であるカテコールアミンや一酸化窒素合成において必須の補酵素である。セピアプテリン還元酵素(SPR)はBH4生合成を調節している重要な酵素である。このSPRの遺伝子機能を探るために、BH4合成系酵素であるSPRおよび他の2種の酵素、GTPシクロヒドロラーゼI、ピルボイルテトラヒドロプテリン合成酵素につき、各mRNAに対してFITC付加アンチオリゴヌクレオチドをATGスタートサイト部位に結合するよう合成を行った。さらにメチル化修飾、S-化修飾を施すことでアンチオリゴヌクレオチドの安定化、細胞への取り込み率を上げ、効果の増大をはかった。またコントロールオリゴヌクレオチドとしてはリバースオリゴヌクレオチドを用いた。細胞はNGFに応答して神経突起をもつ交感神経ニューロン様に分化する副腎髄質褐色細胞種細胞Pheochromocytoma PC12細胞を用いた。まずPC12細胞にアンチオリゴヌクレオチドをカチオン性脂質を用い導入した。1日培養後、導入アンチオリゴヌクレオチドの動向を紫外線照射下での蛍光を観察したところ、確かに核にアンチオリゴヌクレオチドが移行していることが判った。この細胞を2日、4日、6日、8日、10日、14日と培養し、アンチオリゴヌクレオチド導入後のSPR活性、BH4量、ドーパミン量、一酸化窒素量の測定と細胞増殖の変化の観察を行った。コントロールとしては、未処理のPC12細胞、リバースオリゴヌクレオチドを導入したPC12細胞を用いた。その結果、アンチオリゴヌクレオチド導入によるBH4量の低下に伴って、細胞の増殖に有意な影響を与えることが判明した。今後は、NGF添加による分化時のSPRアンチオリゴヌクレオチドの影響について検討する予定である。
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