オピオイドペプチドが疼痛の制御に関与することは周知の事実であるが、最近では、炎症の進行にもオピオイドペプチドが関与する可能性が示唆されている。炎症の発症・進展には好中球とマクロファージが重要な機能的役割を演じることから、本年度はまず、オピオイドペプチドとしてμ型オピオイド受容体の内在性アゴニストであるendomorphin-1および-2を用いて、好中球の自然免疫機能に対する影響について検討を行った。ラット腹腔内において1%グリコーゲンにより誘導した好中球についてインビトロで各種機能の測定を行った。その結果、スーパーオキサイド産生能に対しては、endomorphin-1および-2はいずれも10^<-16>Mから10^<-6>Mにおいて有意な抑制を示した。また、過酸化水素産生能についても、両ペプチドはいずれも10^<-10>Mから10^<-6>Mにおいて有意に抑制した。さらに、両ペプチドは好中球接着能を有意に抑制し、この時接着分子であるMac-1の発現低下も併せて認められたが、別の接着分子であるLFA-1については有意な発現変動は認められなかった。一方、両ペプチドはともに10^<-8>Mから10^<-6>Mにおいて、好中球遊走能を有意に増強した。しかしながら、両ペプチドは貪食能に対しては10^<-12>Mから10^<-5>Mにおいて顕著な変化を示さなかった。上記成績は、内在性のオピオイドペプチドであるendomorphin-1および-2がμ型オピオイド受容体を介して好中球の自然免疫機能に対して影響を与えることを示しており、オピオイドペプチドが炎症の進展に寄与する可能性が示唆される。次年度は、endomorphin-1および-2についてマクロファージの自然免疫機能に対する影響について検討を行い、さらには、脳内における免疫反応に重要な役割を演じているミクログリアについても併せて検討を行う予定である。
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