オピオイドペプチドが疼痛の制御に関与することは周知の事実であるが、最近では、炎症の進行にもオピオイドペプチドが関与する可能性が示唆されている。炎症の発症・進展には貧食系細胞が重要な機能的役割を演じることから、まず、オピオイドペプチドとしてμ型オピオイド受容体の内在性アゴニストであるendomorphin-1および-2を用いて、好中球の自然免疫機能に対する影響について検討を行った。その結果、スーパーオキサイド産生能に対しては、endomorphm-1および-2はいずれも有意な抑制を示した。また、過酸化水素産生能についても、両ペプチドはいずれも有意に抑制した。さらに、両ペプチドは好中球接着能を有意に抑制し、この時接着分子であるMac-1の発現低下も併せて認められたが、別の接着分子であるLFA-1については有意な発現変動は認められなかった。一方、両ペプチドはともに好中球遊走能を有意に増強した。しかしながら、両ペプチドは貧食能に対しては顕著な変化を示さなかった。次に、脳内における免疫反応に重要な役割を演じているミクログリアについて同様の検討を行ったところ、endomorphm-1および-2はいずれもミクログリアの遊走能および貧食能を有意に抑制した。一方、スーパーオキサイド産生能に対しては、両ペプチドは、PMA単独刺激した場合には産生能に著明な変化は認められなかったが、LPSで前処理した後にPMAで刺激した場合において産生能を有意に増強させ、また、低濃度PMAで前処理した後にPMAで刺激した場合においても産生能を有意に増強させた。上記成績は、内在性のオピオイドペプチドであるendomorphm-1および-2がμ型オピオイド受容体を介して好中球およびミクロダリア免疫機能に対して影響を与えることを示しており、オピオイドペプチドが炎症の進展に寄与する可能性が示唆される。
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