研究概要 |
歯原性上皮の腫瘍化における細胞周期制御機構の異常を解明するため、歯原性上皮に由来する代表的な腫瘍であるエナメル上皮腫における細胞周期制御因子および細胞増殖マーカーの発現・局在を免疫組織化学およびin situ hybridization法を用いて検索した。 1.細胞周期制御因子に関する検討 細胞周期の進行因子であるサイクリンD1は、エナメル上皮腫の辺縁部立方細胞に多く、中央部星状細胞に少なく発現していた。亜型の角化部や顆粒細胞での発現は認められず、基底細胞亜型では腫瘍細胞の殆どに発現していた。細胞周期の抑制因子であるp16,p21,p27の分布は異なっていた。p16は、角化部や顆粒細胞も含め腫瘍細胞の殆どに発現していた。p21は、角化部や顆粒細胞を除く腫瘍細胞の殆どに発現していた。p27は、中央部星状細胞に多く、辺縁部立方細胞に少なくみられ、角化部では発現増強がみられたものの、顆粒細胞で発現はみられず、また基底細胞亜型での発現は少数の腫瘍細胞に限られていた。 2.細胞増殖マーカーに関する検討 細胞周期のS期からG2/M期にかけて発現するDNAトポイソメラーゼIIαおよびS期にピークを迎えるヒストンH3 mRNAは、いずれもエナメル上皮腫の辺縁部立方細胞に散在性に発現していた。ヒストンH3 mRNAはDNAトポイソメラーゼIIαに比べ、発現頻度は低かった。
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