研究概要 |
研究代表者らの開発した扁桃投与法で齲蝕原性菌を抗原として免疫すると,誘導された唾液分泌型IgA(SIgA)は齲蝕原性菌特有の菌体表層多糖抗原を選択的に認識し,他の口腔常在菌とは全く交差反応せずに,実験的齲蝕を抑制できた.申請者は,歯周病原性菌のPorphyromonas gingivalisを扁桃投与法の抗原とした場合も,特異性が高く,口腔常在菌の中からP.gingivalisだけを選択的に排除できる可能性が高いと考えた.そこで,扁桃投与法でP.gingivalisホルマリン死菌体を投与し,誘導された唾液SIgAの特異性,および唾液SIgAが認識する抗原が何かを調べた. 扁桃投与法で誘導されたP.gingivalis特異的な唾液SIgA量と血清IgG量をELISA法で調べたところ,グラム陽性菌を用いたこれまでの報告とほぼ同程度であった.また,誘導された唾液SIgAは,P.gingivalis以外の他の歯周病原性菌や口腔常在菌とは反応せず,菌種特異性が高いものであった.このとき,誘導された唾液SIgAとP.gingivalis超音波破砕菌体成分をELISA法とウェスタンブロット法で調べたところ,約半分がP.gingivalisのタンパク抗原を認識しており,約半分は多糖抗原を認識していた. これらの結果から,扁桃投与法でP.gingivalis死菌体を投与すると,グラム陽性菌と同様に特異性が高いSIgAを唾液中に多く誘導でき,同法によってP.gingivalisを口腔内から選択的に排除できる可能性が示唆された. この平成12年度によって得られた成果に基づき,平成13年度は扁桃投与法で誘導した唾液IgAによるヒト歯肉上皮細胞株へのP.gingivalisの付着(感染)抑制効果を検討する予定である.
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