研究概要 |
平成12年度の研究では,歯周病原性菌のPorphyromonas gingivalisを扁桃投与とした場合も,既に研究代表者らが示した齲蝕原性菌の場合と同様に,特異性が高い唾液IgAを誘導できることを明らかにした. 平成13年度は,まず扁桃投与法で誘導した唾液IgAとあらかじめ反応させたP.gingivalisは10%FBS添加Eagle's MEM(抗生物質不含)中のヒト歯肉上皮細胞株(Ca9-22)への付着率が,唾液IgAと反応させなかった同菌のそれの約25%に低下することを示し,誘導した唾液IgAによって上皮細胞とP.gingivalisとの付着をin vitroで阻害できることを明らかにした.このとき,特異的唾液IgAが誘導されたウサギでは,末梢血中のIgE抗体量は生食投与群の対照と同程度で,皮内反応における発赤・腫脹も認められなかったことから,副作用である即時型および遅延型過敏反応は全く惹起されていないことも確認した.このとき,口蓋扁桃,脾臓,その他のリンパ系組織からTリンパ球を分離し,WST-1法を応用して研究代表者らが確立した方法で,Th1タイプとTh2タイプのヘルパーTリンパ球の割合を測定したところ,細胞レベルでも過敏反応に関する応答は認められなかった. これらの結果から,扁桃投与法によって歯周病原性菌のP.gingivalisに対する唾液IgAを誘導すると,副作用なく安全に同菌の歯周組織への定着を抑制することで,同菌を口腔内から選択的に排除できる可能性が示唆された.
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