研究概要 |
プロスタグランジンE2受容体のひとつであるEP1受容体アンタゴニスト(SC-19220)が破骨細胞の形成に影響を及ぼすかどうかを、マウス大腿骨より採取した骨髄細胞を用いたbone marrow cultureの系を用いて検討した。まず、骨髄細胞にRANKLを添加して破骨細胞を誘導する系にSC-19220を添加し,破骨細胞の形成に影響を及ぼすかをTRAP染色を行い検討した。その結果、SC-19220は、RANKLによって誘導される破骨細胞の形成を阻害した。また、RANKLによって誘導した破骨細胞にSC-19220を添加して、形成された破骨細胞に影響を及ぼすかを検討したところ、破骨細胞数が有意に減少し、破骨細胞を死滅させた。 一方、PGE2は骨芽細胞/ストローマ細胞上にRANKLの発現を誘導するが、SC-19220がPGE2によるRANKL発現の誘導に影響を及ぼすかをマウス頭蓋冠骨芽細胞とマウスストローマ細胞(ST2)を用いて検討した。その結果、PGE2によるRANKL発現の誘導には影響を及ぼさなかった。 以上より、PGE2などの骨吸収誘導因子によって誘導される破骨細胞の分化過程において、SC-19220は、PGE2によって骨芽細胞/ストローマ細胞上に発現するRANKLの発現量を変化させずに、RANKLによる破骨細胞の形成を阻害したことから、単なるPGE2受容体アンタゴニストではなく、RANKLによる細胞内情報伝達機構のどこかを阻害している可能性が示唆された。
|