顎骨内インプラントは無歯顎部の補綴法の一つとして、なくてはならない方法の一つである。フィクスチャーの埋入に際しては、X線検査は必要不可欠で、我々はCT再構成画像の有用性を示してきた。また、CTデータを用いインプラント埋入のシミュレーションが行えるソフトが開発され、より安全にフィクスチャーの埋入やわかりやすい患者説明が可能となった。昨年度、シミュレーションソフトウエアのシミュレーション画像上でフィクスチャーのずれを0.5mm程度のずれであれば、穿孔や裂孔形成などの可能性を表現可能であることが確認された。今年度はソフトウエア上では0.25mmの変化も状況に応じてではあるが認識可能となった。しかし、画像上でのシミュレーション結果が実際の患者へ正確に反映されなければならない。そのためには診断用ステントから、サージカルステントへの移行のありかたや画像データから骨面に適合したステントが開発され、シミュレーション結果を反映した正確な埋入が必要になる。また、下顎管への影響などは下顎管にフィクスチャーが接触していなくても知覚鈍麻などの合併症を生じることもある。そのため、どの程度まで近接すると症状を生じるかを追跡調査などにより、明らかにする必要もあるものと考えられた。現在のところシミュレーション結果と実際の埋入結果との整合性がとれていないが、システムとして、穿孔や裂孔形成の有無のみではなく、その程度を細かく表現できるようになればと考えている。さらにシミュレーションソフトウエアを用いて、埋入時に発生すると考えられる穿孔、裂孔形成などの偶発による合併症が予想された場合に、事前にその対応を行うことも必要となり、より発展させた予想・対応システムの開発が必要と考えられた。
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