研究概要 |
歯冠修復物は天然歯と同じ量で咬耗磨耗していくことが理想と考えられ,そのためには天然歯の生理的な咬耗量と隣接面の磨耗量を知ることは不可欠である。本研究はエナメル質の咬耗磨耗と調和する歯冠修復材の開発をめざすための基礎データを得るために、ウ蝕未経験者の天然歯列における、1年間のエナメル質の咬耗量を測定して生理的なエナメル質の咬耗量を明らかにし、さらに咬合力との関係を調査することを目的としている。 新潟大学新入生歯科検診において、ウ蝕未経験者と診断された学生のうち、咬合の著しい異常や歯ぎしりなどの習癖、顎関節異常のない者を19名選定し、選定した学生に研究の主旨説明を行ない、同意を得てすでに協力を依頼していた。1年毎に来院をお願いし、口腔内写真、印象採得、咬合接触状態の採得(チェックバイト)、歯牙接触分析(T-スキャン)、咬合圧力測定(デンタルプレスケール、オクルーザー)の資料収集をすでに3年間にわたりおこなってきた。それらの資料をもとに、印象から作成した模型を用いて歯の断面を万能投影機でトレースし、ベースラインと3年後のトレースを重ね合わせところ、側方運動および前方運動時の接触滑走面の咬耗量は個人差があり、デンタルプレスケールで測定された咬合力との間に正の相関関係があることが明らかになった。
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