| 研究概要 |
失活歯における歯冠内からの漂白法は,変色歯の審美回復法として簡便でかつ歯質保存的であり,臨床上の有用性が高い.しかしながら,術後の歯根歯頚部の外部吸収は失活歯漂白法の大きな欠点である.イヌを用いた組織学的検索により,この吸収は炎症性吸収であると報告されているが,その機序は未だ明らかにされていない.本研究は各種失活歯漂白剤が生体へ与える影響をin vitroと動物実験により調べ,漂白剤と歯根吸収の関係を多角的に検討し,現在用いられている漂白剤がどのように外部吸収の成立機序に関係しているかを実験的に検証することを目的としている.
本年は,in vitroの実験により,各種漂白剤のヒト歯根膜細胞に対する毒性の相違を明らかにした.新鮮ヒト抜去歯より歯根膜組織を採取して得られた歯根膜細胞を,30%H_2O_2,30%H_2O_2+過ホウ酸ナトリウム(2g/ml),過ホウ酸ナトリウム+蒸留水(2g/ml)の各溶液の低濃度ウシ血清培地による1/10^<-3>から1/10^<-8>の希釈液を用いて,24時間あるいは72時間培養し,その生存率を測定した.その結果,30%H_2O_2+過ホウ酸ナトリウムがいずれの期間においても最も強い毒性を示した.24時間後では,30%H_2O_2が過ホウ酸ナトリウム+蒸留水より毒性が強かったが,72時間後ではその逆であった.これまで歯根吸収が報告されている30%H_2O_2と過ホウ酸ナトリウムの混合物の歯根膜細胞に対する毒性が高かったことより,この強い作用をもつ溶液が歯根表面に達した場合には,歯周組織の損傷を引き起こす可能性が高いことが示唆された.
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