研究概要 |
修復物と歯質との辺縁封鎖性を向上させるために,歯質あるいは修復物に対して接着性を有するレジン系合着用セメントを応用する機会が増加している。しかし,本セメントを合着材として使用するレジンあるいはセラミックインレーの窩洞適合性は,メタルインレーに比較して劣るものであり,セメントラインの露出に伴う修復物辺縁でのギャップ形成がしばしば観察され,その改善が望まれている。そこで,レジン系合着用セメントの物性を向上させるための術式を確立することを目的として,本年度はヌープ硬さ試験を行うことによって,セメントの重合特性について検討を加えた。 ヌープ硬さの測定は,セメント填塞面の直下0.1mmから0.1mm間隔で1.0mmまで,その後0.5mm間隔で2.9mmまでの各深さ地点において,微小硬さ測定器を用い,荷重0.25N,荷重保持時間30秒の条件で測定し,各深さ段階で得たヌープ硬さ値を連ねたヌープ硬さ曲線を描記し,この曲線の比較から温度,気相およびエアバリアの使用がレジン系合着用セメントの重合特性におよぼす影響について検討し,以下の結論を得た。 1.いずれのレジンセメントにおいても,大気中の酸素と接触する表層付近のヌープ硬さは低下する傾向が認められ,保管温度の上昇とともにセメント内部のヌープ硬さは向上する傾向を示した。 2.いずれのレジンセメントにおいても,エアバリアの使用は,レジンセメント表層および内部のヌープ硬さを向上させる傾向が認められた。 今後,エアバリアの使用がレジン系合着用セメントの硬化時間におよぼす影響について,検討を加える予定である。
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