研究概要 |
近年,修復物と歯質との辺縁封鎖性を向上させるために,歯質あるいは修復物に対して接着性を有するレジン系合着用セメントを応用する機会が増加している。しかし,本セメントを合着材として使用するレジンあるいはセラミックインレーの窩洞適合性は,メタルインレーに比較して劣るものであり,セメントラインの露出に伴う修復物辺縁でのギャップ形成がしばしば観察されている。この理由としては,これらレジン系セメントの表層に大気中の酸素によって重合が阻害された部分が生じることによるものであり,その改善が望まれている。そこで,この物性に劣る層を除去することを目的として,酸素遮断材であるエアバリアの使用が,セメントの硬化特性および硬化時間におよぼす影響について検討を加え,効果的臨床使用術式を確立することを目的とした。 硬化時間の測定は,レオメーターをチャートレコーダーに接続して行った。すなわち,平成12年度と同様の実験材料を,製造者指示条件にしたがって練和し,このセメント泥を,その温度を23±0.5℃あるいは37±0.5℃にそれぞれ設定したテフロン製試料台に置き,練和開始60秒後から回転速度10rpm,チャートスピード0.2mm/minの条件で測定した。また,測定に際しては,セメント泥の周りをエアバリアで被覆したものと,これを行わないものとの2条件について検討を加えた。 各条件におけるセメントの硬化時間は,練和開始からチャート用紙の変化記録が最大振幅(硬化完了)の95%に達するまでの時間を秒単位で計測し,これを硬化時間とし,以下の結論を得た。 1.供試セメントは,いずれもエアバリアの使用によって硬化時間が短縮する傾向が認められた。 2.供試セメントは,いずれも高い環境温度によって硬化時間が短縮する傾向があり,温度が低いとエアバリアの影響を受ける傾向が認められた。
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