根管イスムスは、根管の拡大形成において清掃不良の部分として残存しやすい領域であるという考えが従来からあり、機械的拡大清掃だけでは内容物の除去が不可能なため、化学的清掃が不可欠な領域といわれている。本研究では、複雑な形態を有する歯の歯内治療において、予後良好な状態を保つために、根管イスムスの処理を行うことを目標としている。すなわち、通法の根管処置後にレーザー照射を行い、内容物の蒸散による瞬時の除去法を検討することを目的としている。肉眼では観察できないイスムスの変化を考察し、歯内治療成績の向上につながる重要な観察であると思われる。 動物実験は、本学研究施設である実験動物舎の改修工事が平成12年12月より行われ、舎内の動物手術室が使用できなかったため、平成13年夏季に実験を開始し、実験には松下産業機器社製、PanalasC10(CO_2レーザー装置)を用い、φ0.8mmの極細の針チップを使用し、照射パワー3W、SPモードにて、照射秒数を2秒、5秒、10秒の条件下で照射を行った。半年間実験が遅滞したことから、現在、樹脂包埋後の連続水平断切片での根管イスムスの内部有機質の状態を観察、記録中である、現在までの実験結果として、根管イスムス部のトルイジンクブルー染色によれば、レーザープローブのφ0.8mm針チップ尖端が的確に到達できた部位では照射面直下での根管壁表層で有機質蒸散および残存有機物の一部消失が確認されたが、根管壁深部での蒸散は不十分であった。照射秒数を20秒に延長することで蒸散はさらに深部まで進行させられると考えられるが、その際、根管壁周囲の象牙質の変質、根管イスムス部歯質の厚さ、根管壁表層及び内部発熱の冷却、排気、歯周組織への影響といった項目を十分に考慮する必要性がある。
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