平成12年度の本研究では、バキュロウィルスを用いたタンパク質発現システムを用いて、ヒト骨シアロタンパク質の組み換えタンパク質(以下rhBSP)を作製し、その生化学的特性を解析することを目的とした。 まず、健常ヒト歯胚組織よりtotal RNAを抽出し、RT-PCR法にてヒト骨シアロタンパク質のcDNAクローニングを行った。タンパク精製時に利用する目的で、得られたcDNAの5'末端に6個のヒスチジンをコードする塩基配列を繋いだ。このcDNAをバキュロウイルスゲノムに組み込んだ後、昆虫細胞であるSpodoptera frugiperda 9(Sf9)細胞に導入を行った。ウィルス感染後、タンパクの発現を確認する目的で、ウィルス感染細胞を溶解してSDS-PAGEを行い、抗ヒスチジン抗体を一次抗体としてwestern blottingにより検索したところ、rhBSPは60kDaおよび65kDa付近に存在するバンドとして検出され、rhBSPが昆虫細胞内に発現していることが確認された。さらに生理活性を調べる目的で、rhBSPを精製してdish表面にrhBSPのコーティングを行い、ウシ歯小嚢由来細胞に対する細胞接着活性を測定したところ、あきらかに接着活性を有していることが認められた。 今後の展開としては、アミノ酸配列分析器にて内部アミノ酸配列を解析後、rhBSPの誘導する細胞接着機構を解明し、硬組織形成に与える影響を調べる必要があると考えられる。
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