研究概要 |
本研究は歯科用CAD/CAMによる機械加工を前提とした新しい歯科材料の開発を行う際に必要となる機械加工性の評価の方法を検討することを目的とした.本年度は試作研削性試験装置いて試作チタン合金の研削性の評価を行った.試作合金の組成はTi-Ag合金が5,10,20mass%Agの3種類,Ti-Cu合金が2,5,10mass%Cuの3種類とした.これらにCP Tiを加えた7組成のインゴットをアルゴンアーク溶解炉で溶製した.そしてインゴットを板状に鋳造後,表面の硬化層を除去して試験片とした.試作研削性試験装置にカーボランダムホイールを装着し,速度を変えて試験片の研削を行った.加工効率の評価として単位時間に研削された体積を重量の減少と密度から求めた.また研削試験中の火花の発生状況や試験後の試験片の温度も調べた.さらに加工面,工具,切りくずについて走査型電子顕微鏡を用いて観察した.いずれの金属も速度が速くなるほど研削量が増加する傾向が見られたが,CP-Tiより試作合金のほうが大きく増加した.またTi-Ag,Ti-Cu共に添加元素の量が多いものほど研削量は多かった.研削量が多い条件ほど火花の発生は激しく,試験片の温度も高くなる傾向にあった.機械的性質を調べたところ,Ti-Ag,Ti-Cu共に添加元素の量が多いものほど引張強さは大きく,伸びは小さく,中心部硬さは大きかった.銀または銅の添加によって切削性が向上した理由として,αTiマトリックス中に脆い金属間化合物が析出したことが考えられた.また高速での研削性が向上したのは,高速になるほど衝撃荷重が大きくなり,金属間化合物の脆さが合金の研削性に与える影響が顕著になったためと推察された.
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