研究概要 |
1)試料の採取:コバルトクロム合金,金合金およびチタン合金などの各種金属と床用レジンから成る部分床義歯で,患者が使用中に破折,損傷したもの,もしくは破断面のレプリカ,計12例を採取し,顕微鏡的観察に供した.また,義歯が使用されていた口腔内の環境や義歯の設計形態を記録した.材料組成はX線分析装置により元素分析を行い特定した. 2)疲労破壊試験:採取した材料(金属またはレジン)と同じ組成の材料を用いて規格試験片を製作し,コントロールとしての繰り返し疲労破壊試験を行った.これより破壊に至る負荷と回数,破断面の形態観察を行い,それぞれの材料に特有の破壊靭性値と疲労強度との関連性を求めた. 3)破折義歯の分析:採取した義歯もしくはレプリカの破折部界面を観察し,破折部の厚さ,幅などの他,義歯中の破折部の位置を記録した.また,亀裂の開始部位と欠陥を同定し,欠陥の大きさを計測した. 以上の試験の結果,特に金属部分の破折が明らかであった症例のうち,多くの場合において,維持装置(クラスプ)そのものか,その近傍で破折の開始点が観察された.また,破壊の直接的な原因として,金属表面の微小な欠陥の存在が大きな影響を与えていたことが示唆された.破損症例においては,破損部の幅や厚さといった形態的な要因よりも,微小欠陥の分布状態が破損事故の発生に大きな影響を及ぼしている可能性が示唆された.平成13年度においては,使用合金ごとにさらに解析を進め,破損部位断面における微小欠陥の大きさとコントロール試験片の欠陥との比較を手がかりとし,口腔内で最終的に破壊を引き起こした応力を推定する予定である.さらに破断面の形状観察から,破壊過程における疲労要素の大きな症例について,破折に要した時間についての予想を行う.
|