研究概要 |
これまで短縮歯列の義歯装着に関しては,咀嚼能力が向上しない,また義歯装着はオーバートリートメントだといった否定的な報告ばかりであった.しかし評価の方法にも偏りが見られる.そこで新たな評価法を開発し,義歯の粉砕能力の必要性,義歯装着による食物移送能力向上のメカニズムを明らかにすることを目的とした. 平成12年度の被験者を対象として,下顎の片側遊離端義歯を製作し,十分に使えるようになった後, 1.実験用義歯(基本的には使用している義歯の複製)の製作 人工歯部分が着脱可能な構造とし,人工歯部分は(1)正常な咬合面形態と(2)対合歯との咬合接触を削除し,咬合接触のない舌側咬頭を残した形態の2種類と,さらに(3)人工歯がなく床部分のみ,(4)義歯を装着しないという4条件を設定した. 2.咀嚼試験 申請者が考案し施行してきた咀嚼試験を行い,義歯の形態と咀嚼機能の関連性を調べた. 粉砕能力に対する影響は認められなかったが,(3)(4)よりも(1)(2)において舌側貯留率は有意に高かった. 3.咬合力の測定,咀嚼運動の記録 咀嚼と義歯装着の影響を多角的にとらえるため,義歯装着,非装着時のそれぞれの咬合圧をデンタルプレスケールオクルーザー(富士フィルム社製)を用いて測定し,下顎の咀嚼運動軌跡をサホンビジトレーナーtype II LCにて記録した.明らかな差異は認めなかった. これらのことより,片側遊離端義歯の装着は食塊形成という観点から有意義であるとことが示唆された.
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