研究概要 |
正常ラットの上顎骨を対象として,人工的に形成した顎骨高度吸収モデルに対して人工骨補填材β-リン酸三カルシウム(β-TCP)を補填し,β-TCPと新生骨との界面部に生じる現象を検索するとともに,β-TCP周囲に形成される新生骨の定性的観察を行う.また,人工骨補填材β-TCP周囲に形成される骨形成量の経時的変化を観察することによって,β-TCPの溶出・吸収の過程を経て自家骨に置換される状態の定量的観察を行う.以上のことにより,人工骨補填材β-TCPによる顎骨骨形成促進能,β-TCPによる自家骨置換能を把握し,顎骨骨吸収モデルの顎骨再建が可能であるかについて明らかにすることを目的とした. 実験動物には,10週齢のWistar系雄性ラット90匹(1群10匹)を用い,両側上顎第一臼歯を抜歯し,人工的顎骨骨欠損を形成した.右側半側を被検側,残りの左側半側を対照側とし,被検側に対してβ-TCPを補填し,対照側は偽手術のみを行った.β-TCPの補填1,2,4,6,8,10,12,16および20週後に上顎骨を摘出した.なお,1群10匹のうち半数は未脱灰標本とし,β-TCP補填時および上顎骨摘出2週前にカルセインを,上顎骨摘出1週前にテトラサイクリンを腹腔内投与し,摘出した上顎骨はVillanueva bone stainを行い,50μmの前頭断未脱灰研磨標本を作製した.残りの半数は,通法に従いパラフィン包埋し,前頭的な4μmのH-E染色標本とした. 現在,β-TCPと新生骨との界面部に生じる現象を観察するとともに,β-TCP周囲に形成される新生骨の定性的観察を行い,また画像解析システムを構築し,β-TCPおよび新生骨の占有面積を計測している.
|