研究概要 |
義歯粘膜面に付着するデンチャープラークは,口腔内においていわゆる菌のリザーバとしての役割を果たし,特に,抵抗力の減退した高齢者の全身への持続的な感染源になることが強く指摘されている。この問題の解決のために,義歯床用材料に抗菌性を付与することに着想し,持続的な抗菌性と防臭性を兼ね備えた無機系抗菌剤である銀ゼオライトを義歯床用材料に添加することを試みた。しかしながら,口腔内に装着の際は常にヒト唾液に曝されており,ヒト唾液に浸漬した場合,ヒト唾液中の蛋白,脂質,糖質をはじめとした様々な有機成分とナトリウムイオン,カリウムイオン,塩化物イオンなどの無機成分が,銀ゼオライトからの銀イオンの溶出傾向を変化させる可能性が考えられる。 平成12年度は,義歯床用材料に銀ゼオライトを添加し,蒸留水およびヒト唾液に浸漬した場合においても効果が発揮されるか否かについて検討した。対象菌は,誤嚥性肺炎および義歯性口内炎の起因菌Candida albicans,Staphylococcus aureus,MRSA,Pseudomonas aeruginosaおよびStreptococcus constellatusの5菌とした。ヒト唾液は3人のボランティアの安静時全唾液を採取し,孔径6.0μmの濾紙にて濾過後,0.8および0.22μmのミリポアフィルターで濾過滅菌した。各試料を蒸留水またはヒト唾液に1日間浸漬後,37℃湿潤下にて菌液を24時間作用させた後,生菌数(CFU)を算定した。その結果,全ての菌に対して両浸漬下ともに,銀ゼオライトを添加した義歯床用材料は抗菌効果を認めた。今後は,長期浸漬した場合の抗菌効果について検討する予定である。
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