平成12年度は、チタンと金との合金を作製する上での問題点を検討した。チタンと金とでは密度に大きな差があるため、両者のインゴットをアーク溶解炉で溶解しても十分に攪拌することができず、光学顕微鏡レベルでもチタンと金とが分離していることが確認できた。そのため、一度溶解して作製した合金インゴットを細断し、再度溶解することでチタンと金とのマクロ的な分離を解消することができた。しかし、上記の方法により作製したチタン-金合金は形状記憶特性を示さなかった。これは、マクロ的な分離は抑制されたものの、ミクロ的にはチタンと金とが合金化しておらず、形状記憶特性を示すとされるTiAu金属間化合物があまり生成されなかったためと推察された。溶解-細断を複数回行っても、熱処理による均質化を行っても、この問題は解消しなかったことから、製造方法を変更する必要があると考えられた。 密度の差が大きい金属を合金化する上では有効とされるプロセスには、粉体焼結冶金法、メカニカルアロイングなどがあるが、極めて酸化しやすいチタンを粉末化してプロセスに用いた場合、作製された合金中の不純物酸素量の増大が予想される。ニッケルチタン形状記憶合金での知見から、合金中の酸素濃度が上昇すると形状記憶特性が発現しなくなる可能性があるため、合金化されたインゴットの脱酸素処理を行う必要があると考えられるが、チタン合金の脱酸素処理は高度なプロセスを必要とするため困難である。そのため本研究には、磁場により原料インゴットを浮上、攪拌しつつ溶解することが可能な磁気浮遊溶解炉を用いた合金作製が適していると考えられた。
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