前年度に行った基礎実験にて、Z軸の位置情報をCCD式レーザ変位計にて抽出する際に、計測面の角度について検討したところ、レーザ光に対し左右30°までの偏角計測での誤差は±10μm以内に収まり、この範囲では実用上充分な計測が可能と考えられた。また30°以上の角度ではCCDセンサーが遠方になる側の場合は誤差は小さいが近方では相対的な角度変化が大きくなるため誤差が大きかった。その結果を踏まえ、今年度は実際にインプラントの位置を抽出するためにインプラントに計測子を装着し、計測子での計測値からインプラント体に位置・向きを算出させた。 計測子はネジ固定でアバットメントに装着できるよう底面に形状加工した径5.64mm純チタン材に対し、面傾斜角20°の三角錐を精密フライス加工を施し製作した。インプラントを垂直に植立した状態において計測子を装着し、XYテーブルを計測ピッチ0.5mmにて移動させ、XY平面で121点のZ軸値を計測させた。121点のうち計測子の辺縁や三角錐の稜線上のデータを除外し、残りを3面毎の群として、各群で直線上に並ばないデータ3個の組み合わせから総当たりで平面の方程式と法線ベクトルを算出した。その結果、得られた法線ベクトルは比較的距離が離れた3点の場合には極めて偏差が小さく、近接した3点の場合には得られた任意の法線ベクトルの内積の最小値は0.998で約3.6°の偏差を生じることになるが、近接した3点の法線ベクトル全ての平均値は偏差を生じなかった。任意の1点でエラーが生じても、面とベクトルの計算の際にはエラー成分が相殺されるためであるが、エラーデータがデータ群の辺縁に発生した場合には相殺できないため、距離の離れたデータを用いた方が信頼性は高く、本法で得られたインプラントの位置情報から臨床で補綴物製作のために用いるに充分な精度を有すると考えられる。
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