研究概要 |
日常臨床において前歯部の審美性に対する要求が高まる中で,硬質レジンは適度な強度と安定した色調性に優れ,成形性の容易さから歯冠補綴材料として多用されている.今回は,歯科用金銀パラジウム合金にチタンおよび窒化チタンコーティングを施し,そのコーティング金属表面にプライマー系のチオリン酸系およびカルボン酸系の接着システムの硬質レジンを築盛し,コーティング金属と硬質レジンの接着性に関する基礎的検討を行った. 硬質レジン築成試料の金属は,歯科用12%金銀パラジウム合金を5×40×1mmの金属試料を鋳造法により作成し,硬質レジンとの機械的歓合力のファクターを極力除去するため鏡面研磨を施した.そして,スパッタデポジション法により出力200W,500Wでチタンおよび窒化チタンをコーティングした.築盛レジンは,チオリン酸系のGC社製アクシスおよびカルボン酸系の松風社製ソリデックスを用いた.前装用硬質レジンの接着性を検討するために,引っ張り剪断強度試験および接着界面,ならびに,引っ張り強度試験後のレジン側剥離面,金属側剥離面について定性,面分析を行った. 1.レジン剥離後の金属面のE.P.M.A.分析より,TiおよびTiNコーティング金属は,金銀パラジウム合金からの剥離がないことが分かった. 2.プライマーによる接着力への影響においては,カルボン酸系のソリデックスにおいては,非コーティングの平均が約11.42Mpa Tiコーティングで,約12.68Mpa TiNコーティングでは,約14.20Mpaと接着力が約10〜20%向上し,チオリン酸系のアクシスにおいては,非コーティングの平均が約12.54Mpa,Tiコーティングで,約13.40Mpa TiNコーティングでは,約13.99Mpaと約10%程度の接着力の向上が認められた. 以上のことからレジンの接着強度は,スパッタコーティングを行うことにより向上することが示唆された.今後は,TiNの金色の発色機構およびベース金属を金色にすることによる硬質レジンの色調への影響について検討したい.
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