研究概要 |
新潟大学歯学部の倫理委員会でヒト培養複合口腔粘膜の臨床応用についての認可を得たのをうけて,術前に十分患者への説明を行ない同意を得た上で,本学歯学部附属病院で臨床応用が可能となった.平成12年度中に行なった症例は口腔舌白板症切除後に生じた粘膜欠損部への移植が全4例であった.すでに平成13年4月にも3例の手術が予定されており,現在細胞を培養し準備中である.施行した4例は組織学的にも十分上皮の重層化した培養複合口腔粘膜であるのを確認した.移植した粘膜の生着は全例で非常に良好であった.移植された培養粘膜は術後6日目の固定に用いたガーゼ除去時にはすでに,AlloDermは赤褐色を呈し,下面からの血管新生像が,創傷治癒ごく初期においても認められることが示唆され,術前の予想と動物実験の結果と一致した.ただ,培養上皮そのものは,その後の経過でAlloDermが一旦白色を呈したことから,周囲組織からの上皮再生が認められるまでは生存できないものと考えられた.また,創の収縮は術後2週までにほとんど認められず,AlloDerm単独移植症例で収縮がこの時期すでに観察されるのとは非常に対照的であった.術後は予定していた4回の生検は倫理委員会で否認され,術後4週目の1回限りが許可されたため1回のみの組織学的観察しかできなくなったが,いずれの症例でもAlloDerm内への血管内皮細胞の侵入が顕著で,肉眼所見を支持した.上皮はすでに再生しており,重層化した上皮が観察された.患者サイドの術後経過として,創部痛は全くなく,良好な治癒経過をたどっていた.また,全身的にも何ら後遺症は現時点で認められない.今後も全身,局所おける経過観察を続行しつつ,症例を積み重ねつつ,免疫組織化学的検索も行い,血管増生や細胞外器質のリモデリングについても検索したい.
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