研究概要 |
唾液腺腫瘍患者の手術摘出標本より腫瘍組織部を採取し、RNAを抽出し、さらに当教室で分離、樹立した培養ヒト唾液腺癌細胞(HSG,HSY,AZA3,TYS)よりも同様にRNAを抽出し、PPARγ遺伝子の発現検索を行った。唾液腺腫瘍22症例のうち9例に、また全ての唾液腺癌細胞にPPARγ遺伝子の発現が認められた。さらに、唾液腺癌細胞においてはPPARγ蛋白質とPPARγと二量体を形成をするRXRα蛋白質の発現も認められた。次に、PPARγ response elements(PPRE)を含むluciferaseレポータープラスミドを用いて、ヒト唾液腺癌細胞におけるリガンド依存性PPARγ転写活性について検討した。Troglitazone(TRO)およびPioglitazone(PIO)などの合成PPARγリガンドはPPARγの転写活性を促進したが、内在性リガンドである15-deoxy-Δ^<12,14>-Prostaglandin J_2はその転写活性に全く影響を与えなかった。そこで、PPARγ遺伝子の変異についても検索を行ったが、全ての細胞において変異は認められなかった。続いて、in vitroにてヒト唾液腺癌細胞の増殖に及ぼすTROおよびPIOの影響を検索した。TROもPIOも濃度依存的に細胞増殖を抑制した。さらに、PPARγ遺伝子を過剰発現させた場合にも増殖抑制効果が認められた。ここまでの結果より、PPARγの活性化が唾液腺癌細胞の増殖を抑制することが示唆された。さらに、PPARγリガンドによる唾液腺癌細胞の脂肪細胞への分化誘導、in vivoにおける抗腫瘍効果の有無およびヒト唾液腺腫瘍組織におけるPPARγ蛋白質の発現様式ついて検索を進める予定である。
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