多骨性線維性骨異形成症、皮膚の色素沈着及び内分泌異常を主徴とするMcCune-Albright syndromeは、G蛋白質の1つであるGsαの遺伝子の機能獲得型変異により201番目のアルギニンが他のアミノ酸(ヒスチジンあるいはシステイン)に置換され、これにより細胞内cAMPの過剰な産生をひきおこすことが原因である。骨芽細胞および骨髄間質細胞にこの突然変異が起こった場合、細胞の増殖を促進するだけでなく、分化機能の制御に異常をきたすことにより、特徴的な線維性骨異形成症をひき起こすと考えられる。顎骨においてもこれに類似した単骨性骨異形成症が発症することがあり、さらに臨床的、病理組織学的に鑑別が困難とされている化骨性線維腫が発症することもある。本研究はこれらの疾患より骨芽細胞を分離し、さらにGsα遺伝子変異を有する細胞株を樹立することにより、病態の詳細な解明のみならず、細胞内シグナル伝達を介した細胞の分化機構や骨形成機構の解明を可能とすることを目的としている。 本年度は、線維性骨異形性症および化骨性線維腫より骨芽細胞を分離し、Gsα遺伝子の変異の有無についてmutaled-allele-specific amplification法を用いて検討した結果、単骨性線維性骨異形性症および化骨性線維腫の両者において、Gsα遺伝子の変異が認められた。このことから、従来は別の疾患として考えられていた単骨性線維性骨異形性症および化骨性線維腫がともにMcCune-Albright syndromeと同じ原因により発症することが強く示唆された。 この結果を踏まえ、現在SV40large T antigenを用いたGsα変異細胞株の樹立を目指している。
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