多骨性の線維性骨異形性症Fibrous dysplasia(FD)は若年者にみられる良性の骨腫瘍類似疾患であり、これに性早熟や色素沈着を併発するMcCune-Albright症侯群においては、GSαタンパク質のArg^<201>のHisあるいはCysへの変異が成因とされている。今回、顎骨に発生する単骨性FDおよび類似した所見を示す化骨性線維腫Ossifying fibroma(OF)について両疾患由来の骨芽細胞を用い、その成因につき細胞生物学的検討を行った。 9、12歳女性FD患者と37歳OF患者の病変部および骨系統疾患を有しない11、14歳女性の腸骨海綿骨より骨芽細胞を分離し、mutant allele-specific amplification(MASA)法によりGsα遺伝子変異の有無について検討を加えた。さらに細胞内cAMPの定量、アルカリ性フォスファターゼ(ALPase)溶性の測定、Alizarin Redおよびvon Kossa染色による石灰化能の検討を併せて行った。 いずれの疾患の骨芽細胞においてもGsαタンパク質のArg201のHisへの遺伝子変異を認めた。正常細胞に比べcAMP産生量はフォルスコリン処理による増加率が小さく、メラトニン処理による低下率は大きかったった。また、ALPase活性や石灰化能の低下を認めた。以上より、顎骨における単骨性FDおよびOFにおいても、それらの発症にGsα遺伝子の変異が関与する可能性が示唆された。 また、現在SV40 large T antigenを用いたGsα変異株の樹立を目指した研究を進行中である。
|