研究概要 |
口腔癌の化学療法効果の判定は、切除標本での残存癌細胞の量的割合と形態学的変化の所見に基づいて行われている。しかし、その効果判定は主観的であることもあって治療成績を必ずしも反映しないことをしばしば経験する。本研究では客観性のある定量的効果判定法を確立することを目的とした。 対象:口腔扁平上皮癌一次症例103例とした。方法:生検組織と手術切除組織からH・E染色標本ならびにFeulgen染色標本を作製した。H・E染色標本を参考にして生検組織ならびに手術切除組織の癌発育先進部における核DNA量と分裂細胞指数(MI)を画像解析装置を用いて測定した。各症例のDNAヒストグラムから術前化学療法前の超4c率および術前化学療法前後の平均DNA量を算出した。生検組織における超4c率から超4c率10%未満群(A群)と10%以上群(B群)に分けたうえで術前化学療法曲後の平均DNA量とMIの変化値から術前化学療法効果を検討した。 結果:術前化学療法前後の平均DNA量とMIの変化値からA群、B群を細分類すると、A群(n=48)では、i;術前化学療法後平均DNA量、MIがともに減少(n=29)、ii;術前化学療法後平均DNA量が増加しMIが減少(n=19)の2亜群に分類しえた。B群(n=55)では、i(n=23),ii(n=15)のほかに、iii;術前化学療法後平均DNA量、MIともに増加(n=6)、iv;術前化学療法前後で平均DNA量に変化がみられずMIが減少あるいは変化なし(n=11)の4亜群に分類しえた。以上i〜ivを細胞動態の変化に基づく術前化学療法効果とした。5年累積生存率はA群では、i;93.1%、ii;94.7%で、B群では、i;73.7%、ii;77.1%、iii;0%、iv;45.5%であった。 したがって術前化学療法前後の平均DNA量とMIを測定し、それらの変化値から化学療法効果を判定することは治療成績を反映する客観性のある効果判定法であると考えられた。
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