前年度の研究において、マウス生体内で活性型IL-12p70を効率的に発現するプラスミドベクターpcDEF12Fを構築し、このプラスミドの皮下注射によって、in vivoでNK細胞の肝臓および脾臓への遊走・集積が著しく増強されることが示された。本年度は、マウスの免疫機能に及ぼすpcDEF12Fの影響をさらに詳細に検討するとともに、マウス実験的悪性腫瘍の遺伝子治療モデルにおけるこのプラスミドの効果を解析した。 pcDEF12Fを投与されたBALB/cマウスの脾臓を摘出し、RT-PCR解析したところ、インターフェロンgおよびその誘導因子であるMig遺伝子の発現の著明な増強が認められた。また、YAC-1細胞を標的とした骨髄細胞の51Cr release assayより、pcDEF12Fが骨髄前駆細胞からのNK細胞の分化を有意に促進することが示された。 マウス悪性黒色腫細胞株B16F1および肺癌細胞株3LLをBALB/cマウス背部皮膚に移植した実験的悪性腫瘍モデルにおいて、pcDEF12Fの尾部皮下投与は、有意な腫瘍増殖抑制効果および生存期間延長効果を示した。この抗腫瘍効果は、プラスミドの投与量および投与スケジュールによって調節可能であることを示唆するデータが得られた。また、細胞性免疫機能不全マウス(NK細胞活性の低下が認められるlymphotoxin-a遺伝子欠失マウス)の悪性腫瘍増殖モデルにおいても、一定の抗腫瘍効果があることが観察された。このいずれにおいても、pcDEF12F投与による個体死などの副作用は認められなかった。現在、マウス化学誘発口腔癌モデルにおける、pcDEF12Fの発癌・腫瘍増殖抑制効果について検討するとともに、promotorをsteroid hormone-drivenとしたプラスミドの構築を行っている。
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