摂食・嚥下機能は、顎およびそれに付随する筋肉の動きを伴うため筋電位や動きが脳磁場計測の障害となる。そのため口腔・顎顔面の運動の中枢制御を脳磁計で測定するには何らかの工夫が必要になる。その一つとして運動関連脳磁場の中でも運動前の脳磁場に着目しこれを計測することを検討した。まず運動準備脳磁場計測のモデルを作成するため、もっとも単純な指の随意運動の準備脳磁場計測を行い、同様な手法を用いて嚥下運動準備脳磁場計測を行った。 研究方法 被検者は本研究内容を理解し、協力の得られた25歳から32歳までの右利きの男女5名(男性2名、女性3名)とした。これらに随意的な右手中指の伸展運動と随意的な嚥下運動を行ってもらい、この時の脳磁場を測定した。脳磁場の加算は今回開発した指圧センサーならびに喉頭挙上圧センサーからの信号と指伸筋ならびに顎二腹筋前腹の筋電図の各2種とした。加算回数は指の伸展運動は50回、嚥下運動は30回とした。解析は圧センサーの有用性と精度をはかるため、2種類の信号の違いを脳磁場ならびにその基準点の時間のゆれにより比較検討を行った。 研究の評価および考察 運動前の脳磁場変動を観察してみると、結果にばらつきがあるが、-1500ms程度からの穏やかな磁場変動の後、大きな磁場変動が現れる場合が多かった。これらは両側性に現れる場合もあり、随意運動誘発部位が両側性に存在する可能性を示唆するものと考えられた。また、筋放電と実際の動きのそれぞれを基準とした場合、両運動とも筋放電の方が電流双極子モデルの適合度(goodness of fit)は高値を示した。しかしながら十分な値ではなく、筋放電のノイズが影響していると思われた。今後もより詳細な検討を行っていく予定である。
|