本学付属歯科病院において静脈内鎮静法施行患者16名(ASA分類1〜2度)を対象とし、プロポフォール投与時の血管痛への、ミダゾラム前投与の効果について検討した。 (方法)初回にプロポフォールをボーラス投与し鎮静状態を得た後プロポフォール持続投与を行った患者8名(以下P群)と、初回にミダゾラムを投与し鎮静状態を得た後、プロポフォールを持続投与した患者8名(以下MP群)に分類した。さらにプロポフォール投与時の血管痛の程度をVerbal Pain Score(以下VPS)を用いて1;全く痛くない、2;少し痛い、3;痛い、4;かなり痛い、5;耐えがたく痛い、の5段階評価を行った。また帰宅時プロポフォール注入時における血管痛の記憶について問診しA;全く覚えてない、B;なんとなく覚えている、C;はっきり覚えている、の3段階で評価した。 (結果)P群の平均プロポフォールボーラス投与量は、53.1±9.2mgであった。プロポフォール持続投与量は、140±75.3mg、処置時間37.6±17.5分、麻酔時間71.2±14.6分であった。VPSの結果は1;3例(37.5%)、2;1例(12.5%)、3;3例(37.5%)、4;1例(12.5%)であり記憶の程度は、A;4例(50%)、B;2例(25%)、C;2例(25%)であった。 M群の平均ミダゾラム投与量は、3.0±l.0mgであり、プロポフォール持続投与量は、124.2±106.3mg、処置時間51.7±34.1分、麻酔時間86.6±36.7分であった。VPSの結果は、1;7例(87.5%)、2;1例(12.5%)であり、記憶の程度は、A;7例(75%)であった。プロポフォール持続投与量、処置時間、麻酔時間および記憶の程度とも差は認められなかったが、MP群において血管痛の出現は、有意な差が認められた。 (考察)ミダゾラム投与後のプロポフォールを持続投与は血管痛を軽減させることが可能であった。これは、ミダゾラムによる鎮静効果、もしくは健忘作用が影響していると思われるが今回明らかにできなかった。しかし、ミダゾラム前投与がプロポフォール鎮静における血管痛を軽減することが可能であり、臨床上有用であると思われる。
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