近年、佐々木らが食道癌患者の切除標本よりStreptococcus anginosusのDNA断片クローンの存在を報告した。この研究はS.anginosusが食道癌の発癌において、慢性炎症の起炎菌として、あるいは発癌課程のプロモーターとして何らかの役割を果たしていることを推測させるものであるが、臓器間でいわゆるDown streamの関係が成立するならば、口腔癌患者や口腔内に異型上皮病変を有する患者にも組織内にその局在が確認されるはずである。本年度は口腔内に感染病巣を有しない健常者の唾液を検体として細菌培養法によりS.anginosus検出率の検討を行うとともに、口腔癌患者、異型上皮病変(白板症)患者においても同様の検討を行った。 20歳代の口腔内に炎症性病変を有さない健常者30例を対象に採取した安静時混合唾液より細菌培養法によりS.anginosusの検出を試みたが、S.anginosusは認められなかった。また口腔癌患者11例(頬粘膜2例、舌3例、下顎歯肉4例、口蓋2例、上顎歯肉1例:全例扁平上皮癌)と異型上皮病変(白板症)患者1例(口蓋)を対象に細菌培養法によりS.anginosusの検出を試みたところ1例に検出をみた。 現在、これら検体よりPCR法を用いた遺伝子診断法によりS.anginosus検出率の検討を行っている状況である。PCR分析は主としてS.anginosus 16s rebosomal DNAのAmplificationを目的とし行っている。今後は健常者の口腔粘膜と口腔癌患者、異型上皮病変(白板症)患者の組織よりDNAを抽出し検出率の検討を行う予定である。
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