In vivoウサギ心筋虚血再灌流モデルを用い、Ischemic preconditioningおよびいわゆるIsoflurane induced preconditioningによる心筋保護効果を循環動態、虚血域(area at risk)、心筋壊死域(infarct size)を指標として比較検討した。 【対象と方法】ウサギ(New Zealand White)n=23を対象とし、コントロール群(以下C群)n=8、Ischemic preconditioning群(以下IP群)n=8、イソフルラン群(以下I群)n=7の3群に分類した。麻酔導入はケタミン/ザイラジン混合液の筋肉内投与にて行った。麻酔の維持はケタミン/ザイラジン混合液の静脈内持続投与にて行った。呼吸管理は気管切開後、空気と酸素の混合ガスを用いて人工呼吸器にて行った。開胸後、左冠状動脈前下行枝に結紮器を設置した。C群は30分の虚血と180分の再灌流を行い、IP群は5分の虚血と10分の再灌流を行った後30分の虚血と180分の再灌流を行った。I群は虚血前にイソフルラン1.5%を15分間吸入させwash out後30分の虚血と180分の再灌流を行った。実験中は連続的に循環動態をモニターした。実験終了後には左冠状動脈前下行枝を再結紮しEvans blueを経頚静脈的に投与したのち、心臓を摘出し凍結させた。心臓はスライスしたのち、Tetrazoliumにより染色した。染色した切片のarea at risk、infarct size、非虚血域の境界はコンピュータ処理により各々の面積を計測し、area at risk/左心室、infarct size/area at riskを算出した。 【結果】左心室に対するarea at riskは3群で有意差を認めなかった。infarct size/area at riskはC群52.2±1.6に対してIP群36.3±2.6、I群39.8±1.9であり、IP群およびI群はC群に対して有意差をもって低値を示した。 【考察および結語】ウサギ心筋虚血再灌流モデルにおいて、心筋虚血前に一時的に吸入させたイソフルランはIschemic preconditioningと同程度に心筋壊死域を縮小させ、心筋に対して保護的に作用する可能性が示唆された。
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