研究概要 |
1.頭部X線規格写真分析:これまでに10名のセファロX線写真分析を行い骨格形態を側面から分類した結果,骨格性下顎前突症9名,前後的不正なし1名であり,このうち開咬が1名あった. 2.CT写真分析:上顎咬合平面を基準平面としてCT撮影を行い,この断面での咬筋の幅径を測定した. 3.筋電図解析:最大咬合時の咬筋放電量を測定した. 4.咬筋の病理組織学的研究:これまでに採取した咬筋組織は,HE染色による検討の後,免疫組織学的検索,電子顕微鏡学的検索を行った.下顎前突症患者の咬筋は,HE染色では,筋繊維のかなり強い群生萎縮を呈する神経性筋萎縮の所見であり,中心核など明らかな筋原性変化を示唆する所見は認めなかった.ATPase染色ではIIC型がみられ,Caの流入によるミオフィラメントの過収縮,神経原性の変化がみられた.電子顕微鏡学的検索では,Z帯,筋繊維の配列に異常がみられた.これまでに,正常咬筋はI型が40%,総断面積で70%を占めていることがわかっているが,これに対し,下顎前突症患者の咬筋はIIC型の割合が増加しており,神経原性の変化が生じていることがわかった. 5.遺伝子異常の検索:採取した咬筋組織の一部は凍結保存した.これまでに咬筋の遺伝子検索についての報告はなく,単一遺伝子ではなく複数の遺伝子に対する多因子の遺伝子解析が必要である.現在それぞれの組織からmRNAを抽出し,DNAマイクロアレイにより,数千個の遺伝子についてその異常を検索中である.DNAマイクロアレイによって異常が検出された遺伝子,および骨格筋の分化への関与が報告されているいくつかの遺伝子については,今後,ABI PRISM 7700 Sequence Detectorを用いたリアルタイムPCRによって,その定量化を行う予定である.
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