実験を始めるにあたって、手技を確認するためもあり、ポジティブ群とネガティブ群を作成した。これらは、頭蓋骨の除去や、凍結切片脳のマッピング等の作業は予想外に手間取ったが、ほぼ期待どおりの結果が得られた。すなわち、ポジティブ群においては、Fos蛋白陽性細胞が三叉神経脊髄路核の尾側亜核(SP5C)、中間亜核(SP5I)、吻側亜核(SP5O)をはじめ脳内諸核に観察されたが、ネガティブ群ではほとんど観察されなかった。また、Fos蛋白陽性細胞の発現は疼痛刺激剤注入3時間後がpeakであることもほぼ判明した。以上を踏まえ、ラットの笑気吸入鎮静法にとりかかったが、問題はその手技であった。ラットの笑気吸入鎮静法に関する文献が見当たらないため、笑気吸入のための麻酔用ボックスを作成する予定で模型を試作したが、実用に耐えられるボックスを作成することは出来なかった。費用と手間をかければ可能かもしれないが、いずれも現状では困難なため、ボックスを作成することは断念した。結局、麻酔ボックスは既存の麻酔器で代用することとしたが、これでは笑気濃度を計測することができない。そのため、麻酔ガスを大量に流すことによって、実際の規定濃度の笑気を計測することを省くことにした。50%笑気吸入鎮静法下におけるFos蛋白陽性細胞はポジティブ群に比べて抑制されていたが、その結果については現在分析中であり、この結果が笑気によるものであることを確認するための追実験を行っている。
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