本学歯学部付属病院顎口腔機能治療部に通院している双生児のうち1児にのみ口蓋裂の発現した10組の双生児に対して、口蓋裂を有するもの(口蓋裂群)と有さないもの(非口蓋裂群)それぞれから末梢血を採取し、ディファレンシャルmRNAディスプレイ法(以下DD法と略す)による分子遺伝学的解析を行った。 I.DD法による口蓋裂群特異的遺伝子断片の単離 DD法で得られた口蓋裂群特異的遺伝子断片は順次PCR反応を行った。さらにデータベース上で既知の情報と照会したところ、これら断片の一部にはMSX1、RARA、PAX9、AP2をはじめとした顎顔面発生の制御に関与するとされてる遺伝子やすでに口蓋裂発生の候補と報告されている遺伝子やその遺伝子と相同性の高い遺伝子が含まれ、さらに複数の未知の遺伝子断片が含まれることが確認された。 II.口蓋裂群特異的cDNAの全長単離 DD法で得られた口蓋裂群特異的遺伝子断片のうち特定された未知のものを利用し、5'-RACE法によりcDNAの全長を得た。さらにこれらcDNAをテンプレートしてランダムプライミング法により放射能標識したプローブを口蓋裂群と非口蓋裂群それぞれのtotal mRNA試料とハイブリダイゼーションさせることでノーザンブロッティングを行い口蓋裂群と非口蓋裂群との間で異なった発現パターンを示すことを確証した。 III.解析結果の比較検討 10組の双生児において、口蓋裂群・非口蓋裂群の両群の間で発現パターンが著しく異なる未の遺伝子が見出された。これら遺伝子について、口蓋裂発症の遺伝的要因である可能性を含め順次分子遺伝学的および統計的検討を行った。 *患者本人および保護者に本研究の趣旨を理解していただき同意を得た上で末梢血の採取を行った。また、関係者の人権および利益の保護には十分な配慮を図った。
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