本研究課題の目的は、歯の萌出に関わる様々な液性因子のはたらきを動物実験や培養系を用いて明らかにしていくことである。そこで平成12年度は、多数歯埋伏を伴う全身疾患として知られる副甲状腺(PTH)機能低下症の動物モデルとして副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)遺伝子欠損マウスを用いて組織化学的・細胞生物学的な解析を行い、PTH-PTHrP系の歯槽骨形成・吸収におけるはたらきを検討した。 方法としては、正常マウスとPTHrPの遺伝子欠損マウスより歯胚とその周囲歯槽骨を単離し、無血清培地内で器官培養を行った。 その結果、正常マウス由来の歯胚は培養条件下においても正常な歯胚発生が観察され、歯槽骨も歯胚発生と同調した形成がみられた。一方、遺伝子欠損マウス由来の歯胚は周囲歯槽骨から圧迫され形態の異常が観察された。培養開始前においては、正常マウス・遺伝子欠損マウス由来とも歯胚周囲には破骨細胞数やその局在に差はなかったものの、培養日数の増加にしたがい後者では破骨細胞数が顕著に減少した。 以上の結果よりPTHrPは正常な歯槽骨吸収において必須な因子と考えられた。そして歯の発生に続いて起こる歯の萌出過程においてもPTH-PTHrP系が歯槽骨内の萌出路形成において重要なはたらきを担うことが示唆された。
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