本研究課題の目的は、歯の萌出に関わる様々な液性因子のはたらきを動物実験や培養系を用いて明らかにしていくことである。平成12年度は、多数歯埋伏を伴う全身疾患として知られる副甲状腺1(PTH)機能低下症の動物モデルとして副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)遺伝子欠損マウスを用いて組織化学的・細胞生物学的な解析を行い、PTH-PTHrP系の歯槽骨形成・吸収におけるはたらきを検討した。その結果、PTHrPは正常な歯槽骨吸収において必須な因子と考えられた。そして歯の発生に続いて起こる歯の萌出過程においてもPTH-PTHrP系が歯槽骨内の萌出路形成において重要なはたらきを担うことが示唆された。 そこで平成13年度は上記の知見を論文発表すると共に、歯の萌出路形成に伴う破骨細胞形成を評価する目的で、in vitroにおける破骨細胞形成系を確立した。切歯、臼歯の萌出期にあるマウス・ラットから歯や歯周組織を含んだ下顎骨体を取り出し、細切ミンス後、15%血清含有のα-MEM中で培養すると、再現性良くTRAP陽性細胞が形成された。これらの細胞を象牙質上で培養すると吸収かを形成したことから、破骨細胞が形成されたと考えられた。なお、下顎骨体から歯や歯周組織を除去して同様な培養を行っても、このような破骨細胞は形成されなかった。これまで、in vitroにおける破骨細胞形成系では、PTHやビタミンD3といったホルモン、あるいはプロスタグランディンやインターロイキンといった局所因子・サイトカインの添加が必要であった。今回確立した培養系においては、このような因子の非存在下で破骨細胞様細胞が形成可能であり、歯の萌出路形成に伴う局所環境の活性評価に大いに有用な実験系といえる。
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