研究概要 |
前年度までの科学研究費補助金研究によって、PCR法を用いた口腔細菌の同時検出法、いわゆる、Multiplex PCR法の開発研究を行なったが、対象が臨床試料中の細菌DNAであり、そのtemplate濃度が僅少となるため、実用化は難しい状況であった。そこで、本年度の研究では、その難点を克服すべく、universal primersによるPCR産物をtemplateとして用いて、菌種特異的PCRを行ない、Nested multiplex PCR法を開発した。歯周ポケット15例から内容液を採取後、試料中の細菌DNAを抽出し、universal primers(8UAと1492R)で16Sribosomal RNA遺伝子をPCR増幅し、カラム精製後のPCR産物をtemplateとして、歯周病関連細菌(Porphyromonas gingivalis,Actinobacillus actinomycetemcomitans,Prevotella intermedia,Prevotella nigrescens,Bacteroides forsythus,Treponema denticola,Treponema socranskii,Treponema vincentii)に特異的なprimersによるPCR増幅(NestedPCR)を行なった。その結果、Nested PCR全例において、標準的なPCR増幅より有意にPCRpositiveな試料が増加し、この傾向はNested multiplex PCR法においても同様に見られた。本研究によって、菌種特異的なprimersによる細菌病原遺伝子の同時検出(Multiplex)ならびにin situ PCRの基礎的データが得られた。引き続き、増幅対象を線毛や毒素、酵素など他の病原遺伝子に広げ、更に臨床試料対象を歯垢や唾液、齲蝕象牙質にまで広げて、基礎実験を進めている。
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