研究概要 |
顎運動解析による顎口腔機能評価を行う際に,小児と成人の顎骨の大きさの違いがデータ解析に与える影響を検討するために,顎口腔機能に異常を認めない個性正常咬合を有する混合歯列期小児9名(Hellmanの歯年齢IIIA期、平均年齢8歳11カ月),成人9名(平均年齢25歳9カ月)について顎運動測定を行い,切歯点の運動量が同じ場合の小児の運動負荷を検討した. 顎運動測定には6自由度顎運動測定器(松風社製、MM-JI-E)を使用した.また正貌および側貌頭部X線規格写真を撮影し,加藤の方法に準じて解剖学的顆頭中央点も求めた.顎運動の解析点は切歯点,左右の運動論的顆頭点とした. 解析は切歯点と解剖学的顆頭中央点との間の3次元的な距離を左右それぞれ求め、小児と成人で顎骨の大きさの相違を考慮した上で,側方滑走運動時の作業側および非作業側顆頭移動量について比較検討した.さらに小児について,ピアソンの積率相関係数を用いて顎骨の大きさと側方滑走運動時の顆頭移動量との関係について検討した. その結果,小児では切歯点-顆頭点間距離が成人より有意に小さく,成人の約90%であった.そこで側方滑走運動において小児の切歯点移動量を成人の90%に規定したところ,作業側顆頭移動量は成人より有意に大きく,非作業側顆頭移動量は成人と有意な差を認めなかった.また小児では側方滑走運動時,切歯点-顆頭点間距離と非作業側顆頭移動量との間に有意な相関関係を認めた.切歯点-顆頭点間距離と作業側顆頭移動量の間には相関関係を認めなかった. 以上の結果から,小児の作業側顆頭移動量が大きいことは,運動負荷が過大なためではなく,小児の顎運動の特徴であることが明確になった. 本報告の結果は第39回日本小児歯科学会大会および総会(2001年5月18日,大阪)にて発表予定である。
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