研究概要 |
生理的な歯根吸収には、それを担う破歯細胞にどのような刺激因子が関わっているのかを知ることを、主要な目的として本研究を行った。ラットの上顎臼歯部は顎骨の成長に伴って遠心に移動し、その際に生理的歯根吸収が観察される。それは、4週齢前後で開始し、12週齢でその進行速度が低下あるいは中止することがいわれている。そこで今回、生後3、4、5、6、12および16週令の雄性ウイスター系ラットを用い、上顎臼歯歯根部の水平断切片を作製した。生理的歯根吸収の一連の過程で、破骨細胞の刺激因子であるRANKLとOPGがどのように発現しているのかin situ hybridization法と免役染色法を用いて探索した。また、破骨細胞の指標には、酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)活性を用いた。 その結果、破歯細胞が歯根を吸収している時期のみならず、その前後の週齢においても、歯根膜細胞や骨芽細胞にはこの2つの刺激因子であるRANKLとOPGが発現していることが観察された。このことは、培養細胞を使ったC.S.Sheelaの報告(Mol. Cell Bio. Res. Com.3,145-152,2000)と似たような結果であった。 このことから、歯根吸収を担う破歯細胞の周辺には、常にその刺激因子が発現していると考えられた。この2つの因子のバランスによって、破歯細胞の分化・成熟が行われるのではないかと考えられた。 今後、より生理的歯根吸収のメカニズムを知るために、ヒトと同じような乳歯と永久歯が交換することが観察される動物を使って解明したいと考えている。
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