研究概要 |
【研究要旨】唾液と毛髪の成分から顎骨成長評価に使用可能な成熟度指標を検討する. 【資料】対象は本学歯学部附属病院矯正科に来院し,全身的な疾患の既往がない8〜15歳の日本人女子とする.下顎骨の成長や成長タイミングを検討するために,骨格型反対咬合と診断された患者(classIII群)と,顎外力などの治療を行わない患者(classI群)の側面頭部X線規格写真(セファロ)撮影,手掌部X線写真撮影,身長計測と唾液・毛髪資料を用いることとした. 【経過】現在のところ資料は,classIII群3名,classI群1名の4名に留まっている.唾液は,5分間パラフィンワックスを咬みながらディスポーザブル試験管に直接回収した.採得された唾液は,凍結・解凍後3,500rpm,4℃,20分間遠心分離し,細胞成分を沈殿させた後,上澄液を1mlチップに移し,-30℃で凍結保存している.尿や血液以外のヒトGH(h-GH)の測定手法は確立されていない.そのため井上ら,Hashida et alの文献を参考に,高感度酵素免疫測定(EIA)による測定を検査会社に依頼した.また,唾液中のIGF-Iがh-GHを反映することから,IGF-Iの測定も依頼中である. 毛髪は,家族と混じらないよう本人専用ブラシを渡し,整髪により脱落したものを資料採得より,次回来院日までの期間で回収した.採得された毛髪は,頭皮から5cmを使用し,アセトンで洗髪後,Microwave用石英試験管容器内に濃硝酸を加え湿式灰化後,溶液化したサンプルをフレームレス原子吸光光度計にてZn濃度を測定した.本年度は,実験方法の確立のために国立環境研究所(NIES)から日本人標準毛髪試料を取寄せ,Znの測定を行ったところ172.68μg/g(NIES保証値172±11μg/g)と我々の実験系の精度が十分であることが確認された.また,毛髪の水分補正についても検討したところ,毛髪Znは加熱による水分蒸発に影響されないことが確認された.今後患者の試料がある程度回収でき次第,Znの測定を行う予定である.
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