本研究は乳歯列期の小児を対象として、唾液中の各種細菌数およびCandidaの検出率について調査し、齲蝕罹患性予測の可能性を検討することを目的としている。 本学附属病院小児歯科外来に来院した患者のうち、無齲蝕児および多数の重度齲蝕罹患児を対象とした。 患児の診療開始前に、滅菌プラスティックチューブに排出させ採取した無刺激唾液を、生理食塩水で希釈し、各種の選択培地に接種して培養後細菌数を算出した。 その結果、多数歯齲蝕罹患児の唾液1ml中におけるMutans streptococciの平均菌数は、無齲蝕児と比較すると約3倍であった。また唾液1ml中のLactobacillusの平均菌数は、無齲蝕児の約2倍であった。しかし多数歯齲蝕罹患児において、唾液1ml中のMutans streptococciおよびLactobacillusの菌数が、無齲蝕児の平均菌数よりも少ない者も認められた。 このことから、齲蝕罹患傾向の高い者を判定する基準として従来報告されてきた菌数を、見直す必要もあると考えられた。 一方、Candidaの検出については、無齲蝕児および多数歯齲蝕罹患児を比較検討した結果、有意差が認められた。多数歯齲蝕罹患児の唾液1ml中において、Candidaの平均菌数は、無齲蝕児の約300倍であった。さらに齲蝕の有無と唾液のpHについて検討し、両者間での相関が伺われた。 現在、症例数を増やすべく唾液採取を継続中である。また、採取された唾液中Candidaの種類や歯質の脱灰との関係についても検討を行う予定である。
|