研究概要 |
●実験方法 被験歯の頬測面はあらかじめ耐水シリコンペーパー#1000にて研削した。被験歯のエナメル質表面に繰り返し速度10pps,先端出力30・40・50・60mJ/pulse,接触・非接触,注水の条件でレーザー照射を行い,SEMにて観察した。 ●結果 接触照射:30mJ/pulseでは研磨エナメル質が蒸散されずに照射面に多く残存していた。それ以外の蒸散された部分についてはエナメル小柱構造に基づく微細な凹凸が認められた。40mJ/pulseになると研磨面の残存はほとんど認められなかった。さらに50・60mJ/pulseになるに従い,エナメル質表面は荒れた様相を呈し,照射面にはマイクロクラックを伴う小塊状または鱗片状の形態が認められるようになった。 非接触照射:30mJ/pulseでは,照射面に研磨エナメル質の残存が認められた。接触照射の30mJ/pulseと比較すると研磨エナメル質の残存は多かった。この研磨エナメル質の残存は40mJ/pulseにおいてやや減少し,50mJ/pulseでほぼ見られなくなった。60mJ/pulseになるとエナメル質表面は接触照射同様にかなり起伏の激しい様相を呈した。 ●考察 非接触照射あるいは照射エネルギーの低い接触照射では照射面に研磨エナメル質が多く残存していた。 このことは照射エネルギーの減弱の結果として説明できる。Er:YAGレーザーの波長は2.94μmで水によく吸収される。このため照射エネルギーが非常に低いか照射面までの距離が離れていると水の影響を受けやすく,そのエネルギーは減弱しやすい。今回の実験においても同様の理由でレーザー照射の不均一が起こったと推察される。 今回の実験から均一な照射は非接触照射では難しく,接触照射の方が有効であることが明らかとなった。ただし,接触照射でも照射エネルギーが低すぎると研磨エナメル質が残存し,高すぎるとマイクロクラックを伴う起伏の激しい形態となるため歯面処理に最適な照射エネルギーは,50mJ/pulse前後だと考えられた。
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