研究概要 |
【目的】歯周炎の発症、進行にサイトカインの役割は重要である。中でも早期発症型歯周炎(EOP)(侵襲性歯周炎)は青年期頃より発症し、遺伝的要因が強く関与していると考えられている。今回我々は、日本人におけるIL-1、TNF-α、IL-6遺伝子多型の頻度について検索し、EOPとの関連性について検討を行った。 【材料と方法】インフォームドコンセントを得た日本人EOP患者約50名、健常者約120名を対象とし、末梢血よりゲノムDNAを抽出した。昨年までに検索したTNF-αの5カ所、IL-1の3カ所の一塩基多型、IL-レセプーアンタゴニスト(IL-1ra)(VNTR)遺伝子多型に加え、IL-1β(-31)、IL-1ra(+2018)、TNF-αの受容体であるTNFR1(-383),(+36),TNFR2(+587),(+694),TNFR2(VNTR)、またIL-6(-572)の遺伝子多型をPCR-RFLP法、PCR-SSCP法、directsequence法にて検索した。さらに、各遺伝子多型の頻度と疾患との関連性について統計学的解析を行った。 【結果】 全てのTNFR, IL-6(-572)の遺伝子多型の頻度はEOP患者と比べて統計学的有意差は認められなかった。またIL-1β(-31), IL-1ra(+2018)の多型は、患者群において比較的高い頻度で認められたが、統計学的有意差は認められなかった。しかし、IL-1ra(VNTR)とIL-1ra(+2018)、IL-1β(-511)とIL-1β(-31)との間に連鎖不平衡の可能性が示唆された。 【結論】以上の結果よりIL-1ra(VNTR)遺伝子多型は何らかの機能的変化を有する他の遺伝子多型と連鎖する可能性があり、これにより早期発症型歯周炎のリスクマーカーとなり得ることが示唆された。
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