研究概要 |
グルタミン酸脱炭酸酵素(Glutamic Acid Decarboxylase, GAD)は,抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(γ-amino butyric acid, GABA)をグルタミン酸から合成する酵素で,脳や膵β細胞に高濃度に存在する。膵β細胞に存在するGADのうち分子量65kDaの蛋白に対するGAD抗体は,自己免疫疾患である1型糖尿病の発症と進行に関わる重要な自己抗体と考えられている。 申請者は,今までは脳や膵β細胞に発現していると考えられていたGAD65が,ヒト歯肉線維芽細胞にも発現することを発見した。また歯周病患者血清においてもGAD抗体が検出でき,GAD65の歯周組織での発現は炎症時により強くなることより,GAD65が自己免疫的機序により歯周病の発症に関わっていると考えた。 本年度は,炎症性サイトカインであるIL-1,TNF-αを加えて線維芽細胞を培養し,GAD65mRNAの発現量を2,8,12,24時間後にRT-PCR法を用い調べた。また炎症性サイトカインを加えていない線維芽細胞のGAD65mRNAの発現量と比較することにより,炎症性サイトカインのGAD65に与える影響を調べた。 その結果,IL-1β刺激の有無に関わらず,8および12時間培養した歯肉線維芽細胞で,GAD65mRNAを検出した。GAD65mRNA発現量は,8時間培養した歯肉線維芽細胞も,12時間培養した歯肉線維芽細胞も共に,IL-1β無刺激より,IL-1βで刺激した歯肉線維芽細胞群の方が増加していた。一方,TNF-αで歯肉線維芽細胞を刺激した場合,発現量に変化はなかった。 この結果は,歯周病などの炎症性疾患が,GAD65の産生量に影響する可能性を示唆しているものと考察される。
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