研究概要 |
申請者はこれまでに,高齢者より採取した歯根膜線維芽細胞の走化能が若年者のものより有意に低下していることを示した。今回,一被検者から採取した歯根膜線維芽細胞の走化能が細胞の継代数によって変化するかどうかを調べた。 1.供試細胞の分離・培養 同意が得られた5名の健常歯周組織を有するヒトの抜去歯より,歯根膜線維芽細胞を分離・調整した。細胞の培養はウシ胎児血清を10%の割合に含むダルベッコ変法イーグル培地を用い,5%CO2存在下,37℃で行った。細胞の走化活性を維持するため,継代はサブコンフレントの状態で行った。 2.走化能の測定 走化能の測定は48wellマイクロケモタキシスチャンバーを用いて行った。走化性因子は,これまでに調べられている増殖因子(PDGF,bFGF,EGF)を用いた。測定は4継代目より実施した。以降は細胞の継代を行うごとに実施し,継代数にともなう走化能の変化を12継代目まで調べた。 【結果】 1.5被験者から採取した培養歯根膜細胞の走化能は,4〜8継代目において,いずれの被験者の細胞においても各増殖因子に対し0.1〜100ng/mlの範囲で濃度依存的に亢進した。また,いずれの増殖因子に対しても濃度が100ng/mlを超えた時点より走化能は徐々に低下した。 2.4〜8継代目と9代目以降で細胞の走化能を比較すると,5被験者の細胞のうち3被験者の細胞については走化能が著明に低下した。残り2被験者については12継代目まで走化能の変化はなかった。
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