研究概要 |
降圧剤ニフェジピンの副作用として歯肉増殖症が知られている。我々は,ニフェジピン誘発性歯肉増殖症ラットモデルを用いて,歯肉線維芽細胞によるI型コラーゲンのファゴサイトーシス抑制による同線維の分解抑制により,歯肉増殖症が発症する可能性を報告している(投稿中)。線維芽細胞膜上ではα2β1インテグリンがI型コラーゲンのレセプターとして存在し,特に線維芽細胞を抗α2インテグリン抗体で処理することで同細胞のコラーゲンファゴサイトーシスが抑制されると報告されていることから,α2インテグリンにより線維芽細胞のコラーゲンファゴサイトーシスが制御されている可能性が高い。そこで我々は,ニフェジピン誘発性歯肉増殖症ラットモデルを用いて,増殖歯肉から歯肉線維芽細胞を分離培養し,細胞膜上で発現するα2インテグリンについて考察した。蛍光標識した抗α2インテグリン抗体を用いて培養歯肉線維芽細胞を抗体染色すると,ニフェジピン投与ラット由来線維芽細胞は明瞭なフォーカルコンタクトの染色が認められず,更に細胞全体の染色程度も対照群よりも弱く,ファゴサイトーシスの抑制が細胞膜上でのα2インテグリン発現抑制による可能性が示唆された。線維芽細胞によるコラーゲンファゴサイトーシスは,肉眼的歯肉増殖が確認される以前の段階で既に抑制されているが,そこでこの段階でも既にα2インテグリンの発現が抑制されるのか,またα2インテグリンmRNAの発現レベルについても検討中である。これらを明らかにすることにより,コラーゲンファゴサイトーシス抑制によるコラーゲン線維の分解抑制の機構を明らかにできると考える。
|